証券会社はどうやって日銀にETFを渡しているのか?

証券会社はどのようにしてBOJに対してETFを渡しているのでしょうか?

いろいろ考えてみたのですが、大きな謎がひとつ。

「裁定残の枯渇する中でどうやって株式を調達しているのか?」

 

この疑問について順を追って考えていこうと思います。

 

1.設定と交換

普通の個人投資家などもやろうと思えばできなくもないのですが、証券会社は一般の投資家とは異なるルートでETFを手に入れることができます。それが「設定」と呼ばれるシステムです。

現在、日経平均は225銘柄を指数の連動するようにポートフォリオを組むにはだいたい8.5億円程度必要なのですが、指数に完璧に連動するように組まれた225銘柄の株式から成るバスケットを用意することができれば、証券会社は運用会社にこの225銘柄を渡して、かわりに渡した株式に見合った口数のETFを受け取ることができます。これが設定と呼ばれるフローです。

前回の記事で書いたように、証券会社はBOJからETFのオーダーを受けると裁定ポジションの中にある先物ショート分を減らしていきます。例えばもともと17億円分の現物ロングと先物52枚分のショートから構成される裁定ポジションがあったときに、17億円分のオーダーをBOJから受けると、証券会社は指定された時間において先物を52枚買い戻していきます。執行時間が終了した時点では先物がすべて買い戻され残るのは現物17億円のロングのみです。

この17億円のポジションを運用会社に「設定」を申し込んで渡し、かわり運用会社から17億円分のETFを受けとります。その後、受けとったETFを今度はBOJに渡します。これによって証券会社は先物はマーケットで解消し、現物はETFに変えてBOJに渡すためポジションはゼロになります。

通常のマーケットではこのようなフローでETFがBOJに渡っていきます。ですが現在はニュースなどでも話題になっているようにETF設定に不可欠の裁定残がどんどん減少していっています。ではどのように株式を買い入れているのでしょうか?

 

2.設定に必要な株式の調達

 株券と調達する方法は2つ。「買う」か「借りる」か。

まず、買う方法を考えます。

証券会社がBOJからオーダーを受けたあとに、先物ではなく現物をマーケットに買いにいったとします。この場合問題となるのが受渡日です。祝日などが無いとすると、T+3、つまり月曜日に買った株が手元に入ってくるのが木曜日です。しかしながら運用会社への株券受けたしはだいたいがT+2です。つまり東証で株券を買って調達しようとしても手に入るのは木曜日で運用会社に渡さなくてはいけない水曜日に間に合いません。東証への直接発注以外にもOTCで他の証券会社などからT+2で買い取るということもありえますが、何兆円ものBOJの買いに対応できるほどは無いでしょう。

 

やはり株券は「借りてきている」というのが有力ではないでしょうか。

 何らかの方法で株券を大量に借りてくることができれば、借り入れた株券を運用会社に渡すことによってもETFは設定することができます。この場合は、借りてきた株を使ってETFを日銀に「空売り」していることとなります。ポジションとしては現物ショート+先物ロングです。これは現実的に可能でしょうが、ポイントは「誰から借りてくるのか」です。これに関しては私はまったく知識が無く想像のみで以下を書いていきます。

BOJは三井住友信託に委託してETFを買ってきているのですが、私の想像では運用会社と証券会社と信託銀行の三者間で何かしら特別な株券貸借取引契約を結んでいると考えています。

証券会社は運用会社との間で株券の貸借契約を結び、運用会社から借りてきた株式で運用会社に対してETFの設定を行っているのではないでしょうか。つまり、「株券を預ける先から株券を借りる」という、まるで銀行の「信用創造」のような仕組みで株券の調達を行っているのではないでしょうか。もちろんいつかは買い戻さなくてはいけないのでマーケットには一定の需給が発生するでしょうが、きっとEFPと呼ばれる証券会社同士で取引されている特殊なインデックス取引で解消されているのでしょう。

もしこの疑似信用創造みたいなフローがあるとすれば、本来株券の大きな「貸し手」として重要だった信託銀行の株券がなくなっていき、株券の貸借レートに大きな影響を与えているかもしれません。

今年の1月2月ころから先物が恒常的に「逆ザヤ」状態となっているのは、本来調達金利分上昇するはずの先物価格が貸借レートの高騰によってマイナスになっているからかもしれません。